MENU

In recent times, local cultures and attractions have been rediscovered and appreciated anew. Shizuoka, rich in cultural assets like food and art, holds unique potential.
"22MAGAZINE," named after Shizuoka's prefectural number, aims to curate and highlight lesser-known spots and people, naturally uncovering the region's latent potential. The team's local presence ensures high sensitivity and meticulous communication.

Now is the time for a "global media" rooted in the "local."

Instagram
FEATURE

Driven by today’s vision 場が生まれ、人が集い、心が動く。 “場づくり”集団、The Youthのこれまでとこれから。 The Youth

「若者と世界を繋ぐ」をミッションに掲げる株式会社The Youth。クリエイティブでカルチュラルなホステル作りで知られる株式会社Backpackers’ Japanのグループ会社として2019年12月に発足後、2021年に仙台にローカルラウンジ[Echoes]、2022年に六本木にカフェレストラン&ミュージックバーラウンジ[Common]をそれぞれオープン。「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を。」というBackpackers’ Japanの理念を受け継ぐThe Youthは、飲食業態にとどまらず、イベント企画やメディア運営などを通して若者が自由かつ健全に生きていくための場づくりに取り組んでいる。また2024年秋には、静岡[COSA]にてロースタリーカフェとしての出店が決定するなど、新たなステージへの助走も始まっているようだ。そこで、代表取締役の佐藤 岳歩(がくほ)さんにThe Youthの過去、現在、未来をうかがうべく[Common]にお邪魔した。

theyouth

自分の人生を自らデザインする面白さ。学生起業までの経緯。

◇よろしくお願いします。まずは佐藤さんの生い立ちと、The Youth創業までの経緯を教えていただけますか?

自分は生まれは山形なんですが、生まれてすぐ出て、5歳まで岩手県の安比高原の大自然のなかで暮らして、そこから高校卒業まではずっと仙台に住んでいました。なので出身は仙台と言っています。中高一貫の男子校でサッカー部に所属していたんですが、そこは割とフランクで縦のつながりも強い部活だったんです。中1,2の頃から高校2,3年の先輩と接する機会が多かったので、先輩たちが聴いてる音楽だったり、行ってる古着屋だったり、休日に行ってるカフェの情報が自然に入ってきたりして。そのうちに「もっといろんなものを見て、聞いて、知りたい」という気持ちが強くなって、東京に行きたいと思うようになりました。同じく、高校くらいから経営への興味もあって、明治大学の経営学部に進みました。ちなみに学生の間にThe Youthを創業しているので学生起業という形にはなります。

◇在学中に社長になったわけですね!実際に「起業しよう」と思ったのは大学に入ってからですか?

起業というか、自分の人生を自らデザインすることへの興味自体は小さい頃からありました。というのも、父がフランチャイズでコンビニの経営をしながら、並行して少年サッカーチームを作って監督をしていたんです。正直、小さい頃は「親がコンビニの経営」ということに対してポジティブな気持ちを持てなかったんですけど、その生活スタイルには魅力を感じていて。休日の調整も自由にできるし、仕事をしながらサッカーチームのこともできるし。そういう生き方って経営者ならではじゃないかなと思ってました。

◇「Backpackers’ Japan」元 代表の本間 貴裕(たかひろ)さんとの出会いや同社でのインターンを経てThe Youth起業に至ったとうかがったのですが、その頃のお話を聞かせてください。

ヒロさん(本間さん)との出会いは、今The Youthを共同創業してるヒロ(山本  拡俊))と、とある企業のインターンで出会って意気投合したのがきっかけです。後日、二人で食事に行ったときに、僕が「こういう思いがあって、場づくりに興味がある」と話したんですね。当時ヒロはBackpackers’ Japanが運営している日本橋[CITAN(シタン)]でバリスタとして働いていたんですが、僕の話を聞いて「紹介したい人がいる」と本間さんと繋いでくれたんです。それが2018年の秋のこと。で、本間さんと会った場所がまさに[CITAN]だったんですけど、そこで話しているうちにもう圧倒されちゃって。

◇それは[CITAN]の空間にでしょうか?それとも本間さんの人柄に?

両方です。本間さんにも「空間作りに興味がある」と話したときに、第一声で「一緒に仕事しようよ!かたちはなんでもいいから!」と言われて。初めましてでそんなことを言われるとは思わなくて、心を突き抜かれました(笑)。

theyouth

◇衝撃的な出会いですね![CITAN]という空間についてはどんな印象でしたか?

そうですね、二つあるんですけど、一つは、それまで僕が持っていた「ゲストハウス」という概念と完全に相反してたということです。僕が学生時代に訪れた東南アジアのゲストハウスといえば、一泊数百円で泊まれて、簡易的なシャワーと小さい寝床があるくらいの場所なんですけど、[CITAN]はまるで違うんですよね。宿泊者だけじゃなく誰もが利用できることだったり、洗練されているけど温かみのあるカフェ&バーラウンジが併設されていることだったり。しかもそこでは実際にお酒や音楽を軸にバックパッカーと地域の人との出会いや対話が生まれ続けていたんです。そうやって彼らが作り出す空間の魅力に純粋にやられました。

もう1個は「宿泊」っていう施設が、僕が興味を持ってきた全てを内包してる空間だと思ったんです。コーヒーもあれば音楽もあるし、食もお酒もアートもそこに含まれる。さらにはイベントを通してそれらをつなぎ合わせることもできる。全てがそこにはあるんです。しかもそこで働く人たちも魅力的で、心引かれました。

◇ファーストコンタクトで、人にも場所にも心を掴まれたわけですね。

そこから少し経った2018年の12月末頃に本間さんから「よかったらハワイで動いているプロジェクトに一緒に来ない? 実際に見た方が伝わるものもあると思うから」と連絡が来て。さすがに「1回しか会ってないのに大丈夫かな……? 」と、やや不安もありましたが、好奇心が勝ってご一緒することにしました。フライトも宿も全てとってもらって、さらに大学への公休届けも本間さんが書いてくれて。分からないことだらけでしたが、現地のさまざまな打ち合わせに参加させてもらいました。それが2019年1月のことです。それまで就活も進めてはいたんですが、2019年の3月頃の本選考が始まるくらいの時には全てストップしてBackpackers’ Japanでインターンとして働くことを決意しました。

◇本間さんに学ぶところも多かったと思うんですが、特に自分の学びになったなというやりとりやエピソードがあれば教えてください。

そうですね。特定のエピソードっていうよりも一緒にいるなかでの態度や姿勢に学びがありました。僕は本間さんとくっついていろんなプロジェクトだったりミーティングに混ざるという経験をさせてもらうなかで、その仕事ぶりを見て刺激を受けました。それとやはり絶対的に大きかったのは「人」ですね。Backpackers’ Japanの中の人もそうですし、その周りにいる大人たちも圧倒的に魅力的だし、明確な意志を持って社会を良くしようとしている。そんな人たちに出会えたこと自体が財産といえます。ちなみに2019年2月でBackpackers’ Japanでインターンとして働き始め、同年12月にはThe Youthを創業しています。

◉The Youth創業までのながれ

2018年秋             佐藤さん、本間さんと初対面。

2018年12月末     本間さんから「良ければハワイのプロジェクト見においで!」の連絡

2019年1月~2月   ハワイプロジェクトに同行

2019年2月           Backpackers’ Japanインターン参加

2019年3月           取り組んでいた就活をストップすることを決意

2019年12月         株式会社The Youth創業

◇激動の数年間ですね!ただ本間さんも誰かれ構わず「ハワイのプロジェクトを見においで!」とはならないですよね。何か佐藤さんに対して光るものを見出されたと思うんですが、そういったことは聞いたことがありますか?

佐藤:かなり時間が経ってからですが「自分の意志を持つことはできても、それをちゃんと言葉にできる人はそう多くはない」と言ってもらったことはあります。

◇たしかにその通りですね。それに二十歳前後の頃といえば、「かっこよくなりたい」「目立ちたい」など自分に目が向きがちだと思うんですが、それに対して佐藤さんは、場所やそこに交流する人のことを考えるという視野の広さが印象的です。「自分は場づくりをしたい! 」となったきっかけはありますか?

それは明確にあって、2011年3月11日の東日本大震災です。当時僕は中学1年生でした。自分の身内に被害があったわけではないんですけど、クラスメートの家族が津波で甚大な被害を受けたりといったことは身近なところでリアルにあって。あの頃は、僕自身も精神的に参っちゃって結構しんどかったことを覚えています。ただ、津波や火事で何もなくなってしまった場所に仮設住宅ができていくにつれて、お風呂とか髪を切るところとか簡易的なお店とか「機能を持った建物」ができていくんですね。しかもそういう場所を作ってくれた人たちって「困ってる人がいるから」っていう理由で国内外から駆けつけてくれた人たちなんです。もちろん無償で。そういう場所ができることで人が集まる。人が集まることでコミュニケーションが生まれて心が動く。絶望的な空気感だからこそ優しさや喜びも大きい、ということを身をもって経験したんです。それにこういうことって、なにも被災した時だけじゃなく、普段の生活でも起こりうると思うんです。そういう場所を世界中の人に作ってもらったので、今度は自分が誰かに届けたいという思いが、震災を通して明確なものになったことは間違いないです。

theyouth

“何を作るか”ではなく“何が起きているか”に目を向ける。

◇The Youthが目指していることを改めて聞かせていただけますか?

The Youthはこれからの社会を生きる若い世代の人たちの人生の景色を開いていくことを目的として立ち上げた会社です。まだ知らない景色を届けることで人生が広がって、その人がその人らしく生きていくことが、最終的には社会が良くなっていくことに繋がっていくと考えています。そのうえで当初作ろうとしていたものは宿泊と飲食を内包した「ホテルレストラン」でした。例えばその施設のなかに学生たちが住める場所を作ることができれば、学生とそこで働く人たちと、国内外から来た宿泊者がその場所を通して、ある種偶発的に出会う。その出会いから知らない世界を知って、いろんな働き方だったり生き方を知ることができる。ただ2020年春にコロナが来てプロジェクトが完全に凍結してしまいました。The Youthは僕含め3人で共同創業したんですが、みんなどうしようもなくなってしまって。いわば経験も実績もない学生3人が突然荒野にほっぽり出されたわけです(笑)。売り上げもないからもちろん給料もない。数ヶ月はUber配達員をして凌いでいました。その後、日本橋のホテル[K5]の運営サポートをさせてもらいながらなんとか食い繋いでいった後、仙台[Echoes]のお話をいただいて、出店に至ったという流れです。だからThe Youthの創業自体は2019年の12月なんですけど、[Echoes]オープンは2021年5月なので1年半くらいかかってるんですね。この1年半はド根性で耐えました。

◇相当な苦労が![Echoes]は佐藤さんの地元だから仙台に建てた、というわけではないんですね。

そうですね、偶然仙台でした。ただ僕らとしては、東京で起業したのに一店舗目がいきなり仙台だったので、覚悟が必要でした。それに業態が宿泊機能を持たない「カフェレストラン」であることも初めは迷いがありました。「俺らって別に飲食店を作りたいわけじゃないよね」と。でもひたすらディスカッションをくり返した結果、最終的に「何を作るかよりも何が起きてるかの方が重要じゃないか?」という話に行き着いて。「俺らって宿泊施設という“機能”を作ることに執着してるけど、その先にある “経験”にこそ価値を感じてるんだよね。じゃあ飲食という空間のなかでどれだけその経験を作れるかが大事じゃん」という話から[Echoes]という場所作りが始まりました。だから今、[Echoes]も[Common]も宿泊ではなく飲食店業態ではありますが、そのなかでの出会いやそこで生まれる経験に本質を見出すということは変わらないです。

The Youth

◇とはいえ街も違えば人も違いますよね。[Echoes]、[Common]で、それぞれどんな場づくりを目指されていますか?

そうですね、まず両者の違いを対比的に挙げると、まずは六本木[Common]が200平米の60坪で、仙台[Echoes]が60平米の18坪で[Common]の1/3程度なんです。60平米は、飲食店としてのサイズとしては申し分ないんですが、食以外のコンテンツを入れるのが難しい。でも食だけをやりたいわけじゃないから、定期的にカルチャー的なイベントをやれる余白を持ちたいと思ってデザイナーチームと打ち合わせを繰り返しました。

それに対して[Common]は、六本木という街自体にナイトライフ、外国人、ハイソといったイメージが強く、自分たちにとって縁遠い場所だからこそ、僕らが一つ点を打った時に、この街で暮らしてきた人とこの街を訪れた人が交わるかもしれないし、それきっかけで新しい何かが起こったら面白いんじゃないかと考えてスタートしました。また六本木は、戦後に米軍の駐屯地が建てられたり、その後防衛庁ができたりといった重要な土地であるという背景があります。さらに90年代にはヒルズの開発が進められて、テレビ局ができ、芸能関係の人が増え……といった興隆があったんですが、00年以降、渋谷など他の街に人が増え始めていったことにより、ある意味存在感が薄まっているという現実があります。それに、美術館、音楽施設もあるものの、それぞれの施設が独立しているため、一点集中で行って帰っちゃう人が多いという特徴もあるので、特定の場所を軸に、音楽や食、アートを一繋ぎにしつつ街を知るきっかけになれれば、という考えのもと[Common]ができました。

◇これからの話ということで、静岡[COSA]の話に移りたいと思います。[COSA]においては、The Youth初のカフェロースターとしての進出とうかがいました。なぜこの形態にしたのかということと、今後の展望について教えていただけますか?

これまで[Echoes][Common]を運営してきたなかでニつの店舗ともに共通して言えることは、コーヒーというのは飲食における揺るぎない要素であることです。やっぱりコーヒーがあるからいろんな方の日常の一部になり得ていると思うんです。だからこそコーヒーの「生産」に近いところから取り組むことで、より一層、人や街に寄り添えるのかなと考えました。

◇店舗の名前やビジュアルも既に決まっていますか?また、店舗で募集する人材に求めることがあれば教えてください。

はい。ブランド名を[PART COFFEE]といいます。「一部・部分」を意味するPARTですね。文字通り、街の一部、景色の一部、生活の一部になるようにという思いを込めました。変わらずにその地に在り続ける存在として、さまざまな年齢層の方の一部になることを目指します。

part coffee

インテリアデザインの点で言うと、例えば静岡市の街中にあるベンチのように、あまり目には止まらないものでも実は機能美が隠されているようなモチーフや、静岡市のシンボルであるカワセミの色味を取り入れようとしています。当たり障りのない町の風景だったり日常の生活の中にも実は美しいものが存在していて、それを一杯のコーヒーを飲みながらたまたま再確認する機会を提供するのが[PART COFFEE]の役目なのかなと。それで静岡の土地のエッセンスをかなり取り入れてます。The Youthらしさ、PART COFFEEらしさ、そして静岡らしさが融け合うような空間にしたいですね。スタッフに求めることとしては、シンプルに素直な方がいいです!それが僕らにとって全てなので。

素直で気さくな[Common]スタッフの皆さん

にこやかに爽やかに取材に応じてくれた佐藤さんだったが、その目の奥には、大震災、コロナ禍、不景気という荒波に揉まれながらも、全ての経験を血肉に変え、「やりたいこと」の指針を見失わず走ってきた覚悟が見て取れた。そのバックグラウンドや今後のビジョンに触れ「リーダーになるべくしてなるのはこういう人だ」と思うのは筆者だけではないだろう。また[Common]で働く方々からも、佐藤さんと同じく今を生きるフレッシュさと自己実現への欲求のようなエネルギーを感じた。まさに「若者」を社名に冠するにふさわしい集団であり、そんな彼らのムードこそが「何か面白いことやってくれそう」という気持ちにさせてくれるのだ。

  • The Youth
    「若者と世界を繋ぐ」を理念に、飲食店や宿泊施設、イベントスペースの運営を通して、若者を中心とした多様な価値観が交わる場を作り出す。施設運営に加え、アーティストやクリエイターを招いたイベントも多数企画。包括的なライフスタイルを提案し続け、若者が自由に生きる社会を目指す。
    https://the-youth.com/

    <運営施設>
    Common
    都市における公共の場を再解釈し、仕事の場と遊びの場を結びつけるカフェレストラン&ミュージックバーラウンジ。日中のブランチやコーヒーに加え、夜は音楽共にカクテルやナチュラルワインを中心に提供する。
    住所:〒106-0032 東京都港区六本木4丁目8-5 和幸ビル 1F
    営業時間:月-土曜日 8:00-23:00
    日曜日 8:00-17:00
    定休日:なし

    Echoes
    食による自由な時間と人々の交流を生み出すローカルラウンジ。東北の食材を使った料理に加え、スペシャリティコーヒーやワインを中心に提供する。
    住所:〒980-0804 宮城県仙台市青葉区大町2丁目3-12
    営業時間:9:30-21:00
    定休日:火・水曜日