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In recent times, local cultures and attractions have been rediscovered and appreciated anew. Shizuoka, rich in cultural assets like food and art, holds unique potential.
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REPORT

PARADISE ALLEY NOWHERE BREAD & CO. × スヌーザー

各地の魅力的な飲食店をキュレートし組み合わせることで、新たな食の可能性を開拓するポップアップ企画。2025年1発目となる今回は、[PARADISE ALLEY NOWHERE BREAD & CO.](※1)(以下[PARADICE ALLEY])と[スヌーザー](※2)によるコラボレーション。これまでは、一方のお店の料理をもう片方の店舗で披露してもらうことで “食×空間”の組み合わせの妙を楽しむスタイルだったが、今回は[PARADISE ALLEY]のカンパーニュに対し、[スヌーザー]が料理内容を考案して1つのプレートを完成させるといういわば“食×食”の試み。一体どんな一皿になるのだろうか。

※1[PARADISE ALLEY NOWHERE BREAD & CO.]… 鎌倉駅前のレンバイ(農協蓮即売所)で20年続くパン屋。自家製の天然酵母を使用した素朴な甘みと酸味、地元鎌倉の野菜を使った日ごとに変わりゆくラインナップ、そしてステンシルで描かれたイラストや模様と、何度訪れても飽きない魅力が詰まっている。異国情緒漂う店内は、日本各地を旅してきた店主、勝見 淳平さんの世界観が投影され、市場の中の休憩所としても愛されている。2025年1月から静岡[cosa]2Fフードホールにて[PARADISE ALLEY NOWHERE BREAD & YOROCCO BEER]として出店。

※2[スヌーザー]… 城崎[OFF.KINOSAKI]の谷垣亮太朗さん、養父市[TANIGAKI]の伸太朗さんの双子が、自然の恵みを料理やナチュラルワイン、ポップアップを通して発信すべく2020年に立ち上げたプロジェクト。確かなキャリアに裏打ちされた味のクオリティ、食材の生産者にリスペクトを払い、素材の素晴らしさを料理で表現する“ローカルコラボレーション”の精神、さらには各地の飲食店やアーティストを招聘して行われる「TANIGAKI FES」の主催といった独自の活動を通して全国的に注目を集めている。2024年12月に静岡[cosa]にて谷垣兄弟の監修のもと満を持して実店舗オープン。

[cosa]1Fの力、フル動員![PARADISE ALLEY]のカンパーニュへのアンサー。

[スヌーザー]の現場を任されているのは、静岡在住の3人の青年― 守屋 光太さん、大平 優太さん、近藤 祐介さん。彼らは昨年、一人ずつ順番に[TANIGAKI]にて住み込みの研修を行い、料理の技術や店作りのノウハウを学んだ。「研修」というよりも「修行」と形容した方が良いほどのタフな期間だったそうだが、その甲斐あって静岡[スヌーザー]では、日々のメニューやオペレーション含め、現場での判断は彼らに託されている。今回のポップアップも谷垣兄弟からメニューや用いる食材についての指示はなかった。とはいえ[スヌーザー]オープンからまだ1ヶ月。日々の営業にあたりながらも初めてのポップアップに向けた準備を行うことは相当ハードだったはずだし、実際に準備期間は、お隣のレバノン料理店[汽]や[PART COFFEE ROASTER]など近隣の方々の力も借りながら試行錯誤が続いたという。[cosa]1Fテナントの力をフル動員して迎えた当日。果たして。

落ち着いた店内に、アンビエントな音色が柔らかく響き、駅前の喧騒から隔絶された穏やかで温かい空気が漂う。カウンター横に設置されたシンセから伸びた端子は、すぐ隣の「スヌーザー」の文字に形取られたパン(この日の提供用ではない)につなげられている。数秒ごとにゆるやかに音階が上下しているが、なんと酵母の動きで音階が変わっているという!目に見えない天然酵母のはたらきを、味覚だけでなく、聴覚的にも届けるという[PARADISE ALLEY]勝見 淳平さんの表現手法。その道20年は伊達ではない。そんな大ベテランが手がけるカンパーニュに対し、[スヌーザー]が出したアンサーとは。

「朝倉山椒(※3)スパイスチキンと地元野菜のタルティーヌプレート」

※3 朝倉山椒 … [TANIGAKI]のある兵庫県養父市八鹿町朝倉が発祥の山椒。柑橘系のフルーツを思わせる爽やかな香りが特徴で、[TANIGAKI]ではレモネードやレモンサワーにも活用されている。

使用食材の農家はこちら。
・HELLO!VEGGIES
・永田農園
・浦田農園
・nogi農園

上記クレジットは告知の段階で明らかにされていたが、そうやって生産者をきちんとフィーチャーするのも[スヌーザー]らしさ。ちなみにシェフの守屋さん曰く、普段から、契約した静岡の農家さんのもとを毎朝訪れて食材を受け取るという。尋常ではないその手間暇と、そこから生み出される料理がもたらす感動は、効率化、時短、ファスト化が加速の一途を辿る現代だからこそ注目されるべきではないだろうか。

平日にも関わらず、近隣のサラリーマンやアパレル関係の方が多く訪れ、お昼はほぼ満席に。普段の営業の常連さんや、SNSで情報をキャッチして訪れた方も多かった。

編集部も早速プレートをいただいたが、文句なしの完成度の高さだ!カンパーニュの香ばしさ。サワークリームやレバームースの旨味。ピクルスやビネガーマリネのさっぱりとした酸味。自家製スパイスと山椒が食欲をそそるチキン。砂肝のコンフィの新鮮な食感。シナモンやナツメグの豊かな風味。蜂蜜の優しい甘み…。味わいのレイヤーが幾層にも重なり、一口ごとに表情が変わりゆく。素材一つひとつが味わい深いうえに、いろんな素材の組み合わせを試せるため最後まで飽きない。鎌倉から届いたパン、兵庫の朝倉山椒、そして地元静岡の新鮮な食材による、見事な“ローカルコラボレーション”が果たされた。妥協せずぎりぎりまで向き合った[スヌーザー]陣の努力の賜物だろう。

訪れた方々からも、「一手間も二手間もかけられているのが伝わります」「まずパンがとてもおいしくて、料理もそれを引き立てていました」「唐揚げ、砂肝、レバーなど、居酒屋メニューがプレートに落とし込まれていて、お酒との相性も良かったです」などなど、いずれも大好評の声。

カウンターに並ぶ[PARADISE ALLEY]のあんぱんとミックスシリアルのパン。

また、お昼過ぎから夕方にかけては[スヌーザー]スタッフの友人も多く駆けつけ、ムードメイカーでフロントマン的ポジションの近藤さんを中心にざっくばらんに談笑しながらもてなす場面も。谷垣兄弟が立ち上げた「スヌーザー」というブランドの美学が継承されつつも、現場に立つ静岡メンバーならではの空気感がそこにはあった。

最後にポップアップを無事完走した[スヌーザー]の3人の感想を聞いてみよう。

大平優太さん
「自分はこれまで飲食の経験はほとんどなかったんですが、[TANIGAKI]での研修と、その後の[スヌーザー]立ち上げを経て料理に対する意識が変わりました。それから研修中、有名なワイナリーやナチュラルワインのイベントに連れて行っていただいたのをきっかけにナチュラルワインに興味が湧いて、今は[スヌーザー]のワインの仕入れも任せてもらっています。ゆくゆくは日本のナチュラルワインのシーンを作っていきたいです」

近藤祐介さん
「振り返ってみると、手探りでやってる感があったんですが、手探りだからこそ見えるものもあって新鮮だったし楽しかったです。同じ[cosa]1Fの[PART COFFEE]さんや[汽]さんなど、いろんなその道のプロが近くにいてくださって、分からないことがあったらアドバイスをいただけたりするのも、ありがたい環境です!」

守屋光太さん
「僕はここに入るまで、周りを知ることを全然してこなかったんですが、[TANIGAKI]での研修では、食材や生産者さん、そして一緒に働くスタッフのことを深く知ることが大事だと教えていただきました。それを知らなければ、適当に飲食をやってる人間で終わっていたと思います。今回のポップアップで自分の現在地を再確認したというか、まだまだ足りてないなと思い知ったので、まだまだがんばります!」