サカノウエユニーク × ABE’s
日本各地の実力派、個性派の飲食店を招聘してのコラボレーション企画。中華、ビストロ…に続く第三弾はラーメン店だ。豚骨がメジャーだった鹿児島であえて塩ラーメンを柱に据えた芯の強さと、風味やトッピングなど細部に至るまで自由に創作する柔軟性を誇り、さらに店内に置くアート作品にもこだわりを持つ文字通り比類のないラーメン店、[サカノウエユニーク]。静岡における無化調ラーメンの先駆者にして代表格。看板メニューの「丸鶏ラーメン」をはじめ、塩、煮干し、鶏白湯、そして限定メニューなど多岐にわたる味を展開し、さらには麺の種類まで選べるというレパートリーの豊富さと洗練された空間づくりで知られる[ラーメンABE’s](以下、[ABE’s])。陸路ならば1000km以上もの距離を超えて隔たった両店舗だが、「メニューにラーメンの写真を載せない」「内装や装飾にこだわる」「流行りやセオリーに合わせず、自己流で味を追求する」など、意外かつ興味深い共通点も。そんな両者の組み合わせの妙に心躍るだけではなく、このコラボレーションを機に何か新たな閃きが生まれるのではなかろうかという期待さえ感じさせるポップアップが実現。
この日のラーメンは[サカノウエユニーク]の代名詞とも言える「いいとこ鶏(どり)」の一本で勝負。そして[ABE’s]からは皮の生地に抹茶を練り込んだ餃子と、鹿児島産の黒豚を使用した炙りチャーシュー丼を用意。[サカノウエユニーク]店主の吉井さんにとっては初めて訪れる[ABE’s]の厨房。両店舗にとって、そして来店するお客さんにとって、どんな1日になるのだろう。
オープンは11:00。しかしオープン前から店先には早くもお客さんの姿が。本来は定休日なので、この時間から並んでいる方々は、当イベントを知ったうえで来てくださった方々ということになる。
「いいとこ鶏」は、[サカノウエユニーク]で親しまれているビジュアルと味を忠実に再現。透き通ったスープに、爽やかな柚子の香り。さらに水菜にレンコンチップスも盛られ、食べる前から既に楽しい。女性のお客さんからの反応も◎。
餃子は、毎朝店で作られている自家製の皮に抹茶が練り込まれたこの日限りのいでたちで「鹿児島×静岡」のコラボ感を際立たせる。チャーシュー丼も、鹿児島から取り寄せた黒豚のバラ肉を使用。500円とお手軽な値段だが、これ一杯だけでもなかなかのボリュームだ。
厨房が一望できるカウンターにて料理をいただいた編集部。製麺機、冷蔵庫といった一つひとつの設備がとにかく大きい[ABE’s]の厨房を眺めながら、「なんかもう工場みたいっすね!」と笑う[サカノウエユニーク]吉井さん。しかし不思議なことに、初めて入る厨房であるにもかかわらず、吉井さんも、側でサポートする[ABE’s]店主の安部圭伍さんも機敏で動きに無駄がない。初めてのコラボとは思えない二人の阿吽の呼吸に、ただただ驚かされた。
お客さんのなかには、イベントであることを知らずに来た方の姿も。普段の[ABE’s]のラーメンとは異なるビジュアル、見た目とおいしさに驚いた様子で、「このラーメンはどこのですか?」とスタッフに声をかけられる方もいた。[cosa]への出店を控える[サカノウエユニーク]が、初めて静岡の地に降り立ち、地域の方と触れ合った記念すべき1日だ。
昼の部は14:00までの予定だったが、時間よりも早く、用意していた130食が完売。しばしの休憩を挟んで夜の部に。こちらも、告知を見て駆けつけた方々が開店前から列を作っている。それを店内に迎え入れる[ABE’s]スタッフも、常連さんとフランクに話されている姿が印象的。なかには差し入れを持ってきてくださった方も。日頃から訪れる方々を大事にしている[ABE’s]クルーの姿勢がうかがえた。
ここからは、この日の様子を写真とともに。
夜の部も、予定していた80食が早々に完売。全員にとって初めての試みではあったが、結果的に両店舗の発信力や評価の高さが如実に感じ取れる1日となった。
最後に両店舗の店主に本日の感想をお聞きした。
◇お二人、1日を終えていかがでしたか?
[サカノウエユニーク]吉井さん : 今日初めて一緒に[ABE’s]さんの厨房に入らせてもらったんですけど、めっちゃやりやすかったです。なんとなく「こういう風に動くのかな」とか、お互いに分かる感じが。
[ABE’s]安部さん : 自分、合わせるの得意なんで(笑)。
[サカノウエユニーク]吉井さん : それから[ABE’s]さんのポテンシャルがすごすぎる。お店のシステムや作りもだし、あと単純に今日って普段は定休日とのことなんですが、告知を見たお客さんがあれだけ集まったのにはびっくりしました。
[ABE’s]阿部さん : 吉井さんはすごいです。感性が素晴らしいし、お店としても本当にかっこいいなって。
[サカノウエユニーク]吉井さん : 褒め合いっすね(笑)。でも似てる部分も多いと思うんですよね。お店の作りとか、飾ってるものとか。最初に見た時から「あ、こういうのも飾ってある!」って思いました。